第5期基礎講座 自分でみつける豊かさと幸せの基準

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3月13日(日)に、第5期真庭なりわい塾の第7回基礎講座を実施しました。

今期の最終の講義とワークショップです。

此の間、ロシアがウクライナに侵攻し、戦争状態が続いています。世界の危機的状況を改めて理解するために、まずは世界史を振り返る講義から始まりました。

●講義「近代を捉え直す」駒宮博男(副塾長)

世界の歴史は、さまざまな国が植民地化され、欧米化された歴史といえる。欧米化=近代化によってもたらされたグローバリズムによる豊かさは持続可能とはいえない。近代の豊かさは、環境に負荷をかけることによってもたらされてきた。

ケイト・ワラースのドーナッツ経済の考え方をもとに、それを国別に分析したリーズ大学のデータを見てみると、残念ながら教育水準が高く、民主主義が発達し、平等な国ほど、資源を浪費し、環境に負荷をかけているという結果になる。欧米はもちろん、日本人の多くが模範と考えてきた北欧諸国も環境負荷が高い。つまり近代が求めてきた豊かさを、これまで通りのやり方で追及することは、地球環境にさらなる負荷をかけることになり、持続可能ではないという結論に至る。

一方で、近代化以前の日本はどうだっただろうか?

江戸の物価を通して経済を考える。士農工商とは言うが、下級武士の生活レベルは農民や大工と大きく変わらなかった。物価も、繊維や米、砂糖などは高いが、それ以外は今とそれほど変わらない。一方で、たとえば歌舞伎の観覧料を観ると、非常に高価な席から現在では考えらないほど格安の席まで、複数のランクがある。つまり、庶民でも気軽に文化や娯楽を享受できたということだ。江戸時代は、物質的平等感は高く、庶民の自由は確保され、民主主義(自治)のレベルは高く、どの階層も階層ごとのモラルを持っていたのではないだろうか。これからの社会のヒントは、むしろ近代以前の江戸(※)や室町時代にあるのかもしれない。

※江戸の町は、都市と周辺の農村を一体としたエコシステムやリサイクルが発達しており、循環型の自然共生社会を実現していた。また、渡辺京二の著書『逝きし世の面影』によると、幕末や明治初期に日本を訪れた欧米人は、当時の日本人の暮らしぶりを見て、その清潔さ、勤勉さ、明るさ、教育や芸術水準の高さなどに感動している。「もったいない」という言葉に象徴される「節度」があり、庶民による「自治」が発達しており、自然や子どもへの「愛情」にあふれた世界は、未来への希望だ。(3月8日、渋澤塾長によるオンライン補講より)

●講義「幸せとはなにか」澁澤寿一(塾長)

持続可能なコミュニティや暮らしとは何かということを、新潟の2つの山間集落から考えたい。ひとつは、現在も3世代、4世代同居の家が多い高根集落である。この集落の特徴は、強固なコミュニティで成り立っていることだ。集落には、「区役場」(高根集落は村上市に合併しているが、地域の公民館には通称「区役場」と呼ばれる自治機能を保有している)に象徴されるような地域自治の仕組みがあり、公民館では毎晩のように、さまざまな寄り合いが行われている。また、風祭をはじめとする伝統的な祭礼行事が今も続いている。集落の維持するための「決まりごと」(掟)。それは、近代の合理性や経済性、効率性、あるいは民主主義といったことの外にある、いわば暗黙知といわれるような領域によって受け継がれてきた。それよって、つながっている人と人との関係性の密度が、この集落の持続可能性を支えている。

もうひとつの集落は、ダムの底に沈み、今は無くなってしまった三面集落である。ダム建設に伴う発掘調査により、縄文時代に数千年持続した集落跡がみつかり、さらには旧石器時代の遺物も発見された。自給自足を基本としたこの村には、「42戸以上、家を増やしてはいけない」という掟があった。そのため、昔は、口減らしのために子どもを間引くこともあった。また、医療が十分ではなく、亡くなる子どもも多かった。家の戸口には、亡くなった子どもを埋葬する習俗が古くからあったという。戸口に子どもを埋葬した理由は、「寂しくないように家族の声を聞かせてあげたい」という気持ちからだと、村の老婆は語る。持続可能であるためには、赦しや慈しみ、そして愛が必要だということを、この集落から教わった。現代のように、愛が語られない世界は、果たして持続可能だろうか。祖先も、あなたも、子孫も、コミュニティも、すべての生命は多様でありながら一つにつながっている。

●修了レポートの発表に向けたワークショップ

ワークショップ①「真庭なりわい塾と私」

これまでの振り返りと今後の展望について、インタビュー形式で、整理し、言葉にしていきました。真庭なりわい塾に応募した理由、受講を通した気づきや学び、自身の変化などを振り返りました。

ワークショップ②「X年後の私」

前半のワークショップでの振り返りをもとに、自身の将来を考えました。X年後(好きな年数を設定)に、自分は誰と、どこで、何をしているのか。そのために、今、具体的に何をはじめるのか。それぞれの夢や希望をグループ内でシェアし、意見交換しました。また、現在の「稼ぎ」「務め」「暮らし」のバランスと、将来ありたい姿を、改めて考えました。

3人1組でじっくりと語り合う

●実践講座について

来年度から始まる2年目の実践講座。活動のフィールドとしてご協力いただく阿口集落について、真庭なりわい塾実行委員で同集落にお住まいの椙原啓二さんよりご紹介いただきました。集落の地理や歴史、地域有志による桜の植樹活動などについて、椙原さんからお話を伺うとともに、実践講座の活動内容について意見交換をしました。

阿口集落の大正田について話をする椙原さん

いよいよ次回は、卒塾式。

それぞれが、どんな将来や未来を思い描いているのか。お互いにシェアする時間です。

※講義資料①「近代を捉え直す」駒宮博男

※講師資料②「幸せとは何か」渋澤寿一

※オンライン補講資料「未来のための江戸の暮らし」渋澤寿一

※ワークショップ資料①

※ワークショップ資料②