第8期講座 第1回「入塾式/集落をあるく・みる・きく」

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6月8日(土)~9日(日)に、真庭なりわい塾第8期の基礎講座が開講しました。今年は18名の塾生が、全7回、1泊2日で毎月、真庭市中和(ちゅうか)地区に通い、共に学びます。

入塾式では、はじめに主催者を代表して真庭市の太田昇市長、続いて中和地区住民を代表して中和地域づくり委員会の大美康雄さんにご挨拶いただきました。

太田市長は、都市への一極集中と農山村の過疎という極端な社会状況の中、農山村である真庭市は、地域の資源を活用し都市と連携しながら、循環型経済や共生社会の実現を目指していること。また、そんな真庭市に、いろいろな背景を持つ人々が集まり学ぶ、この塾を通して、自分にとっての幸せや豊かさとは何か、また、これからの人生や社会について深く考えてみてほしいと述べられました。

大美さんからは、真庭市中和地域が、小学校を中心に550人が暮らす農山村であること。また、未来への希望が持てる地域にしたいとの思いから、さまざまな取り組みをしていることをご紹介いただきました。真庭なりわい塾は、地域住民にとっても多様な塾生と交流できる貴重な機会です。住民の一人として塾生の皆さんを歓迎したいとのお言葉をいただきました。

◆講義「真庭なりわい塾の目指すもの」と「地元学」

入塾式に続いて、塾長の渋澤寿一氏(NPO法人共存の森ネットワーク理事長)が、「真庭なりわい塾の目指すもの」について、また「地元学」についての講義を行いました。

「真庭なりわい塾の目指すもの」

働くことは、お金を儲けることではなく、生きることである。Do(何をするか)よりBe(どう生きるか)が大切。生きることは、働き方の選択肢ではなくて、どのように生きるか。一人一人が、何を大切に生きて、何を未来に繋げていくか。物質的、経済的豊かさだけでなく、生き方を作ることが未来を見つけるキーワードです。この1年で皆さんがどんな生き方・暮らし方を見つけられるか、楽しみにしています。

「地元学」

地元学は、実際に集落を歩き、風景を読み解くことで、地域とは何かと考える手法です。中和地区には13集落ありますが、一つとして同じではありません。風景はどこも違っており、それがその地域の成り立ちを語っています。自然と人間、人と人がどう繋がり、どのような暮らしがその風景をつくってきたのか。風土、文化、生活、歴史など、人々が今に繋いできたものを、集落を歩くことで体感します。

今回は、中和地区の13集落のうち下鍛冶屋(しもかじや)、別所(べっしょ)、初和(はつわ)の3集落を、グループに分かれて歩きました。聞いた内容を翌日、模造紙にまとめ、グループごとに発表し、共有しました。

◆別所集落

別所集落は40世帯が暮らし、空き家は3軒だけ。中和の中でも雪が多い地域です。昔は冬に手仕事や出稼ぎに行く人が多かったが、今はサラリーマンが多いそう。多くの家庭が自家菜園を持ち、火山灰を含む黒ボク土(この辺りではクロボクといいます)に適した大根などの作物を栽培しています。道すがら、地元の農家のお母さんたちに出会いました。ピーマンとニラを交互に植えて病気対策にしたり、ディズニーのキャラクターをカカシにしたり、それぞれが思いのままに畑をされているのが印象的でした。害獣は、猪より鹿が最近多くなってきたそうです。それらを獲って自家用に消費している方もいます。道で人に会うたび、大根やニンニクなどのたくさんの野菜をいただきました。

◆初和集落

中和の玄関口である初和では現在、10世帯約30名が暮らしており、多くが兼業農家だそうです。この集落では、独自の組合があり、トラクターやコンバインを共同で利用しています。ご案内いただいた美甘英之さんによると、米作りは赤字だそうですが、それでも作り続けるのは、昔から米作りができて一人前と認められたからではないか、とのこと。集落には山の清水を引く水道施設もあり、年間3000円で使い放題(現在は、新たに井戸も掘削したため月額1000円)で利用できるそうです。米や野菜は自給し、2週間に1回程度の買い物で暮らしているという方もいます。中和地区の中では積雪も少ない集落で、縄文の遺跡(獲物をとるための落とし穴の遺跡)もあり、古くから人が暮らしやすい地域であったことが伺えます。

◆下鍛冶屋集落

かつては「中和銀座」と呼ばれ、商店が並ぶメインストリートがあった集落です。今では商店は一つも残っていませんが、U・Iターンした世代の活動で集落は賑わっています。東京から移住した蕎麦屋さんは、自家用の蕎麦畑を耕作していたり、また、地元の青年部「ふいごの会」が管理している田んぼでは、今年からドローンを使ってた米づくりに挑戦しています。その近くには、有機栽培や合鴨農法の田んぼも広がり、多様な農業の姿が見られます。また、大阪から中和地区に移住し、古民家を改修しながら暮らす若いご夫婦は、山村留学の子どもたちの受け入れや、地域の子どもたちが過ごせる居場所づくりなど、新たな試みを行っていました。新しいものと古いもの、そして多様な価値観が共存する集落です。

◆おわりに

初回講座では、夜、一人ひとりの自己紹介も行いました。20代から60代まで、さまざまな想いで、参加いただいた皆さん、どうぞ1年よろしくお願いします。また、地元学の案内や、2日目の発表には、地域の方にも参加いただきました。この1年、真庭なりわい塾をどうぞよろしくお願いいたします。

◆講座資料
真庭なりわい塾の目指すもの&地元学(塾長 渋澤寿一)