第5期基礎講座 これからの生き方・働き方

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2月13日(日)に、第5期真庭なりわい塾の第6回基礎講座を実施しました。今回の講座は、新型コロナウィルス感染症の拡大により、まん延防止等重点措置が岡山県全域に適用されたため、オンラインで開催しました。

〇講義「これからの生き方・働き方」渋澤寿一(塾長)

私は40代にミャンマーで、マングローブの植林活動を支援していました。

地域のお母さんたちは、植林活動を手伝ってくれました。夕食のおかずは、マングローブ林で小魚をとり、自給していました。ミャンマーの伝統的な暮らしにとって、マングローブ林は欠かせないものだったのです。ところが、その脇で、企業がマングローブを伐採してエビ池を作り、養殖していました。お父さんたちは、マングローブ林の伐採権を売って、昼間からお酒を飲んでいたのです。ここで養殖したエビのほとんどは日本に輸出されていました。

高度経済成長期、エビの天丼の値段は1200円でしたが、今は500円、ワンコインで、天丼が食べられるようになりました。コールドチェーンが発達したからです。

マングローブ林の伐採権や養殖してたエビを売ることで、子どもは学校に行けるようになりました。井戸を掘って、安全な水も得られるようにもなりました。文明の発達がもたらした恩恵です。エビを輸出する商社のCSRレポートには、「私たちの企業活動はSDGsに貢献しています」と書かれています。確かに、「貧困の根絶」「健康と福祉」「質の高い教育」「安全の水」「人や国の不平等をなくす」といったことに貢献しているでしょう。

しかしその一方で、「森林の破壊」「海洋生物の多様性の減少」「生態系の破壊」など、環境に負荷を与えています。そして、経済発展だけを目指すと、コミュイティは壊れていきます。ミャンマーでは、これまではなかったような争いや殺し合いが起こるようになりました。いったい誰がどこで間違ったのでしょうか。今では、すべてを費用対効果、つまり「お金」で判断する社会になっています。

私たちはこれまでGDPを向上させるために働いてきました。けれども、お金(経済)だけが、幸せの指標なのでしょうか。いかに、経済と社会と環境を調和させるのか。それこそがSDGsが掲げる目標です。個別の指標をいくつか実現すれば良いということではありません。改めて、私たちは、お金(経済)だけが幸せの指標なのかということを問い直さなければならないと思います。

そして、これからは「GDPを向上させるため労働」ではなく「生きる意味を問う労働」に変わるだろうと私は思います。地に足がつき、コミュニティの中で必要とされ、 自然の恵みを得ながら、必要最低限のモノを持つ暮らし。人と人、世代と世代がつながっている社会を実現する。そのためには、「お金」(経済)よりも共感や協働。そして共生(自治)が必要です。そして「私らしさ」は他者との関係の中で生まれてきます。人に興味をもつ、自然に興味をもつ、次世代に関心を広げる。つながることのベースに「共感」があります。

〇トークセッション「先輩に学ぶ-私の生き方・暮らし方-」

北房地域に移住した3人に、移住のきっかけから今の暮らしに至るまでのお話を聞きました。お話を伺ったのは、大阪から約25年前に移住し果樹栽培で就農し、昨年販売会社も立ち上げた平泉繁さん。千葉から移住後に旧北房中央保育園を活用し、TABIBITO SHOKUDOというカフェを経営する工藤朋子さん。奥様のご両親も含め3世帯で京都から移住し果樹で就農、現在は独立し家族でブドウ栽培をしている林圭吾さんです。

3者の共通点は、仕事とプライベートの境がない暮らしの中に、子どもたちが一緒にいること。自分の親がどんな仕事をしているのか、暮らしの中で子どもたちは知り、その輪の中に子どもたち自身も参加していることに、新しく、でも懐かしい暮らしを感じました。

林圭吾さんとご家族

そうした働き方、生き方、暮らし方を実現できるのが、真庭の良さだと改めて思います。

〇講義とワークショップ「ナリワイをつくる」伊藤洋志(LLP ナリワイ代表)

 午後は、「ナリワイをつくる」などの著書を書かれている伊藤洋志さんとオンラインでつなぎました。やればやるほど技が身に付き、頭と体が丈夫になる仕事を「ナリワイ」と定義し、様々な分野でナリワイづくり(=仕事の自給)を実践されている伊藤さん。それは決して新しい働き方ではなく、身の丈にあった働き方で、世の中が良くなり、小さな元手で始められるもの。その考え方を基に、伊藤さんがこれまで作ってきた数々のナリワイをご紹介いただき、その考え方やナリワイづくりの手法を教えていただきました。

伊藤さんは、「無駄な支出」「余っているもの」「特技・関心」の3つに着目し、ナリワイづくりを実践してきました。ワークショップでは、2人1組に分かれ、この3つの要素を組み合わせて、自分に何ができそうかを考えるワークショップを行いました。また、自分のやりたいことを実現するために誰かにお願いごとをする(助けてもらう)コツも、お話いただきました。

 今回の講座は、これまでの「経済的価値のため労働」から、いかに、家族や暮らし、環境、そして地域(コミュニティ)や社会とのバランスをとりつつ、働くことができるのか、また個々の幸せや世の中のために、それぞれの生き方にあわせたナリワイをどのようにつくることができるのか、といったことを各自が考え、模索する機会になったのではないかと思います。

 そして、お互いが関心と共感を持ち合う社会を実現するためには、コミュニティは欠かすことはできません。関係性のある幸せな社会をつくることは、まさにコミュニティの中で生きるということです。

 講座に先立ち、オンライン補講では、副塾長の駒宮博男さんには、「コミュニティと自治の仕組み」と題して、地域のことは地域で決める「自治」の大切さをお話いただきました。

 お互いの関係性(コミュニティ)の中で、共生する場(自治)をつくり出すこと。水や食料、エネルギー、教育・医療・福祉を「自給」し、自立的な経済を目指すこと。さらには「自給」と同時に、「自足」する(欲望を肥大化させない)こと。そんな幸せな社会こそが、これからは求められているのだと改めて考えさせられる講座でした。

※当日の講義資料(渋澤)

※当日の講義資料(伊藤:抜粋)

※オンライン補講資料(駒宮)