■第1期生による2年目プロジェクト(実践講座)の活動報告
昨年度、基礎講座を修了した第1期生のほとんどは、4月から2年目の実践講座に参加し、「木の活用チーム」「里山の恵みチーム」「農と特産品チーム」「地域づくりチーム」の4つのプロジェクトに分かれて活動してきました。11月3日(文化の日)に開催された「中和紅葉祭」では、実践講座の成果報告として、ポスター展示による塾の活動紹介、中和の皆さんに向けてのステージ発表、加工品の販売を行いました。
展示では、プロジェクト毎にポスターを製作し、活動の様子を紹介しました。里山の恵みプロジェクトは、展示と合わせて五つ草(いつくさ)のお茶の提供を行いました。
ステージ発表では、全員でステージに上がり、簡単な活動紹介とこれまで地域で活動させていただいたお礼を中和地区の皆さんにお伝えしました。
農と加工品プロジェクトは、前日から準備して、10種類のお餅を作り、販売を行いました。
会場には、たくさんの地元の皆さんが来場され、塾生も地元の方との交流を楽しみながら参加することができました。
紅葉祭のあとは、プロジェクト毎に4月からの活動の振り返りを行いました。
「木の活用チーム」は、一の茅集落にあるお堂の修繕に関わらせていただき、地元の大工さんにご協力いただきながら、材の加工から床張り・壁張りを行いました。後半は二手に分かれ、「自伐林業チーム」は、山から木を伐って、玉切りし、薪に加工する一連の流れを実践し、「木工チーム」は、花台の製作に取り組みました。
メンバーは、見聞きするだけでなく、実際に自分の手と体で実践することで、その大変さを痛感したと言います。また、作業することの楽しさと同時に、厳しさや難しさも知りました。活動でお世話になった講師・協力者の皆さんには、技術だけでなく、仕事(ナリワイ)に向き合う姿勢を教えていただいたことも、刺激になったようです。また、お堂の修繕では、たくさんの地域の人たちの手によって、地域の財産が受け継がれていること、そうした地域の人の共同作業(ツトメ)によって、中和の風景がつくられることを実感できました。
「里山の恵みチーム」は、地元の方から里山の植物利用や、中和地区に伝わる「五つ草」の風習について学び、実際に「五つ草」の素材(ヨモギ、ドクダミ、ゲンノショウコ、カヤ〈ススキ等〉、ショウブ)を里山から採取して、加工品を試作しました。また、シナノキ繊維取りと縄ない、草木染めも実践しました。
「五つ草」は、中和の80代より上の方々が、かつて暮らしに取り入れていた風習で、60代以下の人になると地元の方でもあまり知らないと言います。「五つ草」は旧暦の端午の節句の前日に行う風習で、5種類の草を束ね、屋根の四隅に1束ずつを投げ上げます。薬草3種(ヨモギ、ドクダミ、ゲンノショウコ)が健康を守り、カヤは家を守り、ショウブは5月の節句の植物であることから、この5種を束ねるそうです。1束は、お風呂に入れることから、メンバーは入浴グッズも試作しました。伝統的な生葉をシンプルに束ねて乾燥させただけの入浴剤、バスソルト、石鹸、入浴剤などです。また、五つ草でお茶もふるまい、他のプロジェクトの塾生や地元の方にも飲んでいただきました。失われつつある文化を学びながら、現代の暮らしにあった新しい活用方法を提案できたことは、とても楽しく、また良い経験になったようです。
「農と特産品チーム」は、米づくりの一連の作業と、畑での野菜作りを行い、紅葉祭ではざまざまの味のお餅を作って販売しました。3月中旬には、稲の種もみを水につける「浸種」という作業を行いました。4月上旬には、浸種した種もみを苗箱に播く「もみ播き」、4月下旬には苗床を、耕した土の上に置き、ビニールを被せて育苗の準備をしました。5月は、コシヒカリと赤米の田植えを行い、6月は畔の草刈りを行いました。9月は稲刈りの予定でしたが、台風が直撃してしまい、実施することができませんでした。
紅葉祭では前日からメンバーが集まって、よもぎ、赤米、エゴマ、芋、みかん、ぶどう、りんごなど、さまざまな味のお餅を作りました。当日は味見をしてもらいながら販売し、他のプロジェクトの塾生や地元の皆さんにたくさん買っていただくことができました。売り上げは、ささやかですが、中和地区に寄付させていただきました。米づくりも野菜づくりも、メンバーにとっては初めてのことばかりで、失敗もあったようですが、地元の方の深い懐に助けられ、無事に活動を終えることができました。
「地域づくりチーム」は、中和地域づくり委員会が実施する「空き家調査」に協力するとともに、中和小学校PTAの皆さんとの「子どもキャンプ」を企画、実施しました。「空き家調査」では、各集落の地元の方と一緒に一軒一軒の空き家を訪ね、立地や設備、建物の傷み具合を調べるとともに、管理状況について聞き取りを行いました。その後、中和地域づくり委員会では、空き家の持ち主にアンケート調査実施しました。その結果、中和地区には62軒の空き家があることがわかりました。また、そのままで使用できる、あるいは多少修理すれば使える空き家のうち、家主が人に譲ったり貸したりする意向のある空き家が14軒あることが分かりました。この調査結果は、中和地域づくり委員会が管理し、今後、空き家の有効活用を検討していくための基礎資料として活用される予定です。
地元の子どもたちを対象とした「子どもキャンプ」の実施にあたっては、保護者の方をはじめとする地域の皆さんにご協力いただき、人工林を間伐してベンチをつくり、広場と周遊路の草刈りをして、会場の「ハニワの森」の整備を進めてきました。当日は、地元の子どもたちと保護者の皆さん(約40名)のほか、塾生とその家族の皆さん(約30名)にもご参加いただき、総勢70名のイベントとなりました。メンバーは、森の中での遊びや散策、キャンプファイヤーやフォークダンスなどを企画して、中和の子どもたちに自然の中で遊ぶ楽しさを伝えることができました。
実践講座は、プロジェクトリーダーとなった地元実行委員の皆さん、そして中和地区の多くの皆さんのご協力により実施しました。塾生は、森や田畑での生業、あるいは地域の皆さんとの活動を、実際に身体を動かしながら体験することができました。それによって、見聞きするだけではわからなかった中和の自然の感触・匂い、そこで暮らす地域の人の懐の深さや思い、知恵と技、生き方そのものを教えていただきました。本当にありがとうございました。
2年間、真庭市中和地区に通った第1期生たちは、この地域が大好きになりました。将来、移住する人も出てくるかもしれませんし、今後も通い続け、地域の皆さんと関わり続ける人もいるでしょう。真庭なりわい塾は2年で修了となりますが、お互いの関係は続いていきます。そうした関係性を積み重ねていくことが、地域の明るい未来にもつながっていくことを心から願っています。