10月27、28日(土日)の基礎講座では、「これからの生き方・働き方を考える」ことをテーマに、自身の将来について考えました。
1日目は、塩見直紀氏(半農半X研究所)の「半農半X」のレクチャーと「自分のX探し」ワークショップ。そして、中和に移住した先輩方のお話を聞き、夜は塾生同士の振り返りワークショップを行いました。
2日目は、伊藤洋志氏(LLPナリワイ)の「ナリワイのつくりかた」のレクチャーとワークショップ。最後に副塾長の駒宮博男氏(NPO法人地域再生機構)がまとめの講義を行いました。
塩見直紀氏のレクチャーでは、「半農半X」とは何かを教えていただきました。
塩見氏は25歳のときに「半農半X」という言葉に出会い、33歳のときに地元である京都府綾部市にUターンして、その言葉通りの生き方を自ら実践しながら世の中に広めてきました。
「半農半X」は暮らしのなかに農的に生きる時間を持ちながら、自分の天職(ミッション)となるXを全うして生きるという考えです。「農」は、自分の暮らしに合った頻度(時間、広さ、場所)で実践します。田舎に移住して自分の畑で物を作って食べても良いし、都会のマンションのベランダのプランターに野菜を育てても良いのです。「X」もフルタイム、パートタイム、ボランティア、自営業、会社員など、どんな形態で良いといいます。「X」の内容は、人それぞれ。「自分×他者」「既存のアイデア×既存のアイデア」「古いもの×新しいもの」など、複数の発想の組み合わせによってオリジナリティを生むこともできます。そして、それを実践するのは自分自身。実践する際には、「1人1研究所」をつくって、自分が何者であるかを他者に伝えることも大切です。そうして、自分なりの「農」と「X」を研究・実践することが「半農半X」の生き方です。
後半のワークショップでは、この「X探し」を、ワークシートを使って行いました。まずは、Xの素となるキーワードをできるだけたくさん書き出します。その中から好きなものを3つ組み合わせて、実践するフィールドを決めると、おのずと自分の「X」が見えてきます。それを実践する1人研究所の名前を考え、全員で共有してワークショップを終えました。
2日目の伊藤洋志氏のレクチャーとワークショップは、「ナリワイのつくりかた」がテーマです。伊藤氏が提唱するナリワイは、「余っているもの」「無駄な支出」「特技」の3つの要素を組み合わせることで成り立っています。たとえば、「遊撃梅農家」というナリワイは、農家の繁忙期に収穫を手伝い、余った「梅」を利用して、「流通マージン」という無駄な支出をなくし、伊藤氏の特技である「ネットやメール」を使ってホームページを作り、新鮮な梅を消費者への直接販売するというものです。また、「木造校舎ウエディング」は、余っていた「廃校の木造小学校」を利用して、「一般的な結婚式と披露宴」にかかる支出を節約し、伊藤氏の「幹事力」と「人探し」の特技で、手作りの結婚式を商品化したものです。 伊藤氏のナリワイは、小さな元手で始められるものばかり。それも生活の中で余っているものを活かして、自分や仲間が持っている特技を活かし、ナリワイを生み出しています。
塾生たちは、自分の身の回りの「余っているもの」「無駄な支出」「特技」の3つの要素を書き出し、ナリワイを考えました。何をするかが決まったら、誰を相手にしてどういう効果を狙うのかなど、商売のコンセプトや、必要な技術、運営形態を整理していきます。また、ナリワイの核となる素材も、そのままでよしとするのではなく、位置づけを見直したりします。「遊撃梅農家」であれば、旬の時期の新鮮な梅を、適正な価格で消費者に届けるということがコンセプト。そのためにインターネット上で取引するという運営形態を選びました。その実現のためには、農家と消費者をつなぐ人と技術が必要です。そこまで決まれば、あとは、少しずつテストを繰り返すことも大切。こうしてつくったナリワイは、1回目は赤字でも少しずつ成長していきます。
一つのナリワイの収入の目安は、年間30万円です。その規模のナリワイを10個つくったら、年収300万円になります。元手が小さいので、いつ辞めても不利益を被ることはありません。自分の生活にリズムに合わせて、不定期に実施することもできます。一つ辞めたら、温めておいた次のアイデアをナリワイにしていきます。こうした考え方をもとに、塾生は自分なりのナリワイを考え、伊藤氏にアドバイスいただきました。
今回の講座まで、多くの塾生は「何か人と違うことをしなくてはならない」「でも何をすればいいか、何から始めればいいかわからない」と気負い、悩んでいたようでした。ですが、今回の塩見氏の「半農半X」、そして伊藤氏の「ナリワイ」の考え方を知り、自分なりの「X」や「ナリワイ」のヒントを得て、勇気をもらったように思います。
基礎講座は今回で折り返しとなり、来年1月までの講座は残り3回となります。1月の最終講座では、修了レポートとして塾生一人ひとりが「X年後の自分」を発表します。今回の講座は、自分の将来を描くにあたって、大きな糧となりました。
次回11月10日(土)~11日(日)の講座は、「教育と地域の未来~子どもたちの笑顔あふれる中和を目指して~」と題して、地域で支える教育の可能性、地域コミュニティにおける自治や務め、行事や祭礼について学びます。初日(10日)のプラグラムは公開講座とし、NPO法人グリーンウッド自然体験教育センターの代表理事辻英之氏の講演等を行います。どうぞ、ご参加ください。(詳細は、真庭市交流定住推進課 担当・金田までお問い合わせください)
《講義資料》
1)中和に移住した先輩方のお話
2)まとめの講義