第6期基礎講座「私達がつくる~教育・しごと・地域」

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11月12日(土)~13日(日)に、第6期真庭なりわい塾の基礎講座を実施しました。今回のテーマのひとつは「教育をつくる」こと。初日、午前中は、中和小学校の「中和いきいき学習発表・交流会」に参加し(自由参加)、午後から、同小学校で「スクール・コミュニティ」をテーマとした公開講座を実施。小学校高学年児童が企画した竹灯篭づくりに参加しました。

翌日は、「ナリワイをつくる」をテーマに講義とワークショップを開催。塾長、副塾長からも、「これからの生きかた・働きかた」についてお話いただきました。

●中和いきいき学習発表・交流会

中和小学校は、令和元年度に真庭市初のコミュニティ・スクールになりました。以後、学校運営協議会をつくり、中和いきいきサポーターズ倶楽部が中心となって、「中和の子どもを元気、そして地域を元気に」を合言葉に活動を行っています。また、生活科・総合的な学習では、地域に学び、地域を元気にする「中和いきいき学習」を実施。毎年、11月には、子どもたちが学習成果を発表し、その後、地域の皆さんと話し合う「交流会」を行っています。

今回、基礎講座と、中和いきいき学習・発表交流会の開催日程が、ちょうど重なりましたので、塾生数名も、地域の皆さんと一緒に参加させていただきました。

現在、中和小学校の児童数は19名ですが、保護者の皆さん、地域の皆さん、そして塾生も含め、総勢60人近い方が参加。子どもたちの元気な発表に多くの勇気をもらいました。

●公開講座「地域にひらかれた、地域とともにある学校へ」

午後からの公開講座は、中和小学校の教室をお借りして開催。特別講師に岸裕司さん(CSマイスター)をお招きし、千葉県習志野市立秋津小学校の「スクール・コミュニティ」の実践に学びながら、中和小学校と子どもたち、そして地域の未来を、塾生と地域の皆さんが共に考える場にしたいと思い、企画しました。

はじめに、岸さんに「学校開放で地域をつくる~スクール・コミュニティの可能性~」と題して、ご講演いただきました。岸さんは1952年、東京生まれ。東京湾の埋め立て地である千葉県習志野市秋津に、まちが誕生するのと同時に、都内から家族で転居しました。秋津小学校でPTA会長を含む役員を7年経験し、保護者のお父さんを中心に巻き込みながら、「子縁」(小学校に通う子どもたちとの縁)を核とした学習支援活動や生涯学習の推進、地域づくりに取り組んでおられます。現在、小学校の余裕教室等は住民自らが管理を行い、放課後や休日も利用しています。まさに「スクール・コミュニティ」による生涯学習とまち育てを実践していらっしゃる方です。

ご講演の後、「子ども・学校・地域の未来」と題して、木田訓祥先生(中和小学校長)、土肥真由美さん(中和いきいきサポーターズ倶楽部代表)、 鳥越厳之さん(中和小学校学校運営協議会委員)、渋澤塾長によるパネルディスカッションを行いました。

塾長からは「東京では、学校の余裕教室を住民が管理することは、到底考えられない。学校との間で、それだけの信頼関係を培ってきた秋津小PTAの皆さん、そして地域の皆さんは、すばらしい」といった発言がありました。

学校の校舎を地域で活用しようといった議論は、多くの場合、廃校になってから始まりますが、学校があるうちから、余裕教室などの活用について検討することが大切だと、改めて気づかされました。秋津小学校の場合には、あらゆる世代が、毎日のように学校に集い、共に学び合い、あるいは子どもたちと交流しています。だから、子どもたちも、物怖じせず、当たり前のように大人と会話し、遊びも学びも交流も楽しんでいます。その姿こそが、究極のコミュニティ・スクールだと感じました。

公開講座終了後は、中和小学校の高学年が企画した竹灯篭づくりに参加しました。みんなで竹灯篭をつくり、中和神社をライトアップし、地域の「ありがとう」のつながりを表現しようという企画です。保護者の皆さんや地域の方々に混ざって、塾生も竹灯篭をつくり、点灯式を行いました。普段は、少ない人数の教員と子どもしかいない学校ですが、たくさんの人が集まり、無事、竹灯篭が灯って、子どもたちも先生方も嬉しそうでした。

●「ナリワイをつくる」伊藤洋志氏(LLP ナリワイ代表)

2日目のテーマは「自ら仕事(なりわい)をつくる」ことです。「ナリワイをつくる」「イドコロをつくる」などの著者である伊藤洋志さんをお迎えして、ナリワイづくりの講義とワークショップを行いました。

色々なナリワイをつくって実践しておられる伊藤さん。モンゴル武者修行ツアー、農繁期の遊撃的農家、全国床張り協会、断熱用の羊毛の輸入と販売、おしゃれな作業着(SAGYO)の製作と販売、廃校を活用した結婚式のプロデュース、時々蓄積した知識を本にする、などさまざま実践されています。

伊藤さんのナリワイづくりは、自分自身のためにもなるし、世の中のためにもなる仕事をつくること。そしてそれを、小さい元手で、「いくらかの準備期間と身ひとつではじめられる割に合う仕事」というカタチにしてゆくことです。それは、決して新しい働き方ではなく、具体的に生活が向上する活動です。ナリワイづくりのためには、居るだけで気分が回復するイドコロ(居所)をたくさん作ることも重要だそうです。

ワークショップでは、実際に伊藤さんの思考法を実践してみました。

・世の中で無駄な支出、困りごと(世の中/周辺/自分の生活)
・余っているもの(物体/空間/人など、世の中/周辺/自分)
・特技、やりたいこと(他人のも可)

この3つの項目からアイディアをたくさん出し、それらを組み合わせ、ナリワイになりそうなものごとをグループで考えました。塾生からは、ナリワイのネタがたくさん出てきて、それぞれのグループで盛り上がりました。このワークは、かしこまった場でなく、ちょっとした友人との集まりなどでやってみると面白いと思う、とのこと。皆さんもぜひ遊び感覚でやってみてください。新たなナリワイのヒントが出てくるかもしれません。

■「これからの生きかた・働きかた」~塾長・副塾長からのメッセージ~

2日目の最後には、塾長・副塾長それぞれから、「これからの生きかた・働きかた」をテーマにお話をいただきました。

はじめに、駒宮副塾長より、新型コロナウィルスのまん延や、ロシアとウクライナの戦争等により、グローバル経済がますます脆弱化し、食やエネルギーの不足、物価高騰など、私たちの生存にまで関わるような大きな影響が現れていること。また、地球温暖化や気候変動など、地球環境の危機は50年以上も前から叫ばれているのに、私たちはそれに真剣に向き合おうとはしていないこと。そして第四次産業革命によって、人々の所得は二極化し、貧富の格差がさらに広がるであろうこと。また、AIが発達することにより、これまであった多くの職業の多くなくなる可能性が高いこと等が説明されました。そした世の中で、人類に残された選択肢は、ローカリゼーションしかないのではないか。一極集中を是正して、地方分散型の社会にすることが重要といった提案がありました。

一方、渋澤塾長からは、エクアドルでマングローブの植林活動に携わった経験から、SDGsが求める「経済・社会・環境の調和」は、いかに実現することが難しいか。その答えを出すのは、今のままでは到底無理で、人類が欲望を押さえなければならないこと。また、お互いが関心と共感を持ち合う社会(ローカルな社会)で生きることが幸せへの一歩であること。これまでのように、ただお金を稼ぐために働くのではなく、「生きる意味を問う労働」を目指すことが大切なのではないか、といったお話がありました。

次回12月講座では、改めて、塾長、副塾長の最終講義があり、また、塾生同士のワークショップを通して、それぞれにとっての「これからの生きかた・働きかた」を模索していきます。激動する時代の中で、私たちなりの生きかた・働きかた、そして幸せの基準を改めて考えましょう。

【講座資料】
岸裕司氏 講演資料
駒宮副塾長 講義資料
渋澤塾長 講義資料