第5期基礎講座 集落をあるく・みる・きく

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10月3日(日)、第5期真庭なりわい塾の第2回基礎講座を実施しました。

岡山県に緊急事態宣言が発令されたことに伴い、先月の講座は急遽中止。1カ月、間を空けての開催となりました。

今回は北房地区の4つの集落に分かれて「地元学」を行いました。塾生は、集落を歩きながら、その場所でみつけたもの、疑問に思ったことなど、地元の方に尋ねます。

飲み水は、どのようにして確保していたのか?

田んぼの水源はどこにあるのか?

この小屋は何に使うのか?

植林される以前は、どんな風景だったの?

この祠には、何を祀ってあるのか?

塾生が尋ねることは、地元の皆さんとっては普段は気にしない、当たり前のことかもしれません。でも、改めて丁寧に聞くと、その土地固有の風土や生活文化が見えてきます。

聞いたお話は、午後から模造紙にまとめて、グループごとに発表を行いました。

■Aグループ:中津井・藤田集落

藤田は、国道から北の斜面には畑が広がり、南には牛舎と水田が広がるのどかな集落です。家の敷地には酪農用のサイロも多く見られます。かつては半数以上が牛を飼育していましたが、今は松本勇さん1軒となりました。儲かると聞けば、その時々でタバコ、イ草、桃や葡萄、牛とチャレンジしてきた歴史があります。

集落を見下ろす高台にある観音堂と憩いの家は、皆が集う心の拠り所となっています。境内を若者が練り、投下された宝木(しんぎ)を奪い合う会陽(えいよう)という祭や、虫送りの行事なども以前は行われていました。

■Bグループ:呰部・双内集落

Uターンして帰ってくる若者が多く、子どもの数も多い集落。帰ってきた若者が家を建て、世帯数が1戸増えたことが、最近の嬉しいニュース。月に1度、住民同士、顔を合わせますが、会合も行事も昔ほどではありません。そんな緩やかにつながる集落には、若者が帰ってきやすい雰囲気があると感じました。

家々の裏山には愛宕様や荒神様の祠があり、地域を見守っているようです。谷水を利用した水源は、今も数軒が使っています。各家のすぐそばにはお墓があり、3~4世代の家族とご先祖様が一緒に暮らしているような不思議な地域です。

■Cグループ:上水田・井尾集落

毘沙門の滝から流れ下る水は、5つの水路に分かれて、集落すべての田を潤しています。かつて川は蛇行し、米をつく水車や、野菜の洗い場が各所にありました。田の水源がひとつであることが、集落の結束の源になっています。

里山では、古くから「たたら製鉄」が行われ、刀鍛冶の集団が住んでいた歴史があります。築120年の民家には古い民具が残されており、薪でお風呂を焚く一方、太陽光や太陽熱も利用。集落にはグループホームを誘致し、障がいのある人も共に暮らしています。人と人、歴史、自然の共生が感じられる集落でした。

■Dグループ:水田・興法地集落

興法地は、三方を山に囲まれ、興法地川を中心に水田が広がる集落です。一昔前までみんな米を作り、精米まで自分の家でしていたといいます。山の麓には、お寺や社が配置されています。かつて一帯の田んぼは、お寺の持ち物で、地域の方々がお米を納めた蔵が今も残っています。

荒神様やお稲荷様、廃寺となった寺にかつて祀られていた火の神様がいるお堂は、上・中・下の3地区が交代で管理しており、今でも心の拠り所になっています。その他、昔の住職のラブロマンスや山の中腹あたりにお宝が眠っているなど、ロマン溢れる話も残っています。

参加した塾生から、さまざまな感想がありました。その一部を紹介します。

・その土地を知るために、実際に行って、見る。そして話を聞くということの必要性を理解しました。聞くだけではわからない、実際に行ってみなければわからないことを学ぶことができました。

・農作物が時代に応じて変化してゆく背景や理由を知り、百姓の生活の一端を体感したような気がします。改めて農業の難しさを知った思いです。

・谷水を取水し、何段階にもろ過して、各家に引き込む。シンプルだけど丁寧に、大切に維持されていて感銘を受けました。

・今まで地形や水の流れをあまり気にせず生活していたが、これらはとても重要なこと、知っておくべきことなのだと気づきました。

・どの地区も神様、仏様を大事にしていて、信仰を途切れさせない工夫をしているのがわかりました。無宗教のイメージが強い日本人ですが、身近に進行が残り、神様、仏様と共に生活をしているのが素敵だなと思いました。同じ北房でも、集落が違うだけで、困っていることが違うことに驚きました。

・江戸、明治、大正時代の話が、地元の方から「先日の話」のように語られることに驚きましたが、戦国時代、古墳時代のことまでも、日常の延長線上に出てくるので、「この時間感覚は何だろう」と興味を持ちました。

・お話を聞いていると、本当に「生活」しているんだなあと感じました。自分には「地元」という意識がないからか、長年住んでいても、その「歴史」を知らないので、少し寂しさも覚えました。

・それぞれ歩いて数十分ほどの集落だと思うが、かなり特色が違い興味深かった。都会はそれに反して均一化された空間のような気がする。文化や風土、土地柄というのは目立たない。人間が自然を制御しているからなのかもしれない。人間が環境に合わせていくのが、多様である(diversity.)ということなのかもしれない。

・ご高齢の方が多く、人が少ない印象でしたが、きれいな土地でもあるので、もう少し生かせる仕組みがあればと感じました。お金の話がありましたが、お金ではない経済がもう少し主流になれば、このような場が生かせると思いました。

・「その土地で何をするか?」と考えるときに、その土地は「どんな歴史で、どういった変遷で今に至るのか?」を知ることが、とても大切だと感じました。

次回の講座のテーマは「食と農」です。

高度経済成長期以前の自給自足を基本とした暮らしと、現代とを比較しながら、再び、地域の皆さんにお話を伺います。