講座報告

真庭なりわい塾 10月の活動報告

■10/14、15基礎講座「~コミュニティの原点を学ぶ~」

 

今回は、「~コミュニティの原点を学ぶ~」というテーマで、講義、パネルトークを行いました。また、前期振り返りのワークショップを行いました。

 

講義は「地域で生きる~ツトメとは何か~」と題して、駒宮副塾長(NPO法人 地域再生機構 理事長)にお話しいただきました。

――「つとめ」とは、住民主体の定期的な会合や道路清掃、祭りや冠婚葬祭、PTAや子ども会、消防団など、地域での働きや役割を指します。そうした様々な働きや役割の集合体が地域自治の基本です。もともと日本では、市町村の地区単位や集落単位で、コミュニティの自治が成立しており、教育や福祉、医療、エネルギーなど、その地域のあらゆることを地域住民たちで話し合い、意思決定してきました。災害があれば自分たちで復興計画を立て、電気が必要になれば自分たちで電力会社を設立するなど、自分たちで地域経営を行う自治の力があったのです。

ところが現在の日本の地域は、市町村の合併が進んだことによって、中央集権の力が強くなり、地域は均一化し、自治力を失っています。さらに人口減少や高齢化、地域経済の縮小化など、様々な問題を抱え、状況は悪化するばかりです。こうした地域課題を解決するために全国で様々な方法が試されていますが、一つ言えることは、技術(システム)だけでは絶対に人間は動かないということです。まずは、かつてあった地域の自治を思い出し、住民の「当事者意識」や「誇り」を取り戻さなければなりません。

真庭なりわい塾では、塾生一人ひとりが地域に根ざし、新たな価値観を創造することを目指しています。一方、地域に対しては、自治の推進(地域創成)をお手伝いすることがミッションです。地域から見ると、「地元学」や「聞き書き」は、よそ者や若者の力を借りて「当事者意識」や「誇り」を取り戻すことにつながります。しかし、地域自治の復活や再生には、まだまだ長い時間がかかります。真庭なりわい塾は、中和地区の皆さんと一緒に、地域にとっての豊かさや幸せ、持続可能な地域社会について考えていきたいと思っています。

 

パネルトークでは、中和地区に住む大美康雄さん(浜子集落)、高谷裕治さん(荒井集落)、山岡伸行さん(別所集落)、赤木直人さん(一ノ茅集落)に、具体的にどんな自治の仕組みや「つとめ」があるのか教えていただきました。

――中和地区には13の集落があり、様々な地域団体があります。集落ごとの自治会では、集落単位の行事や日常のルールなどを話し合って決めています。自治会は、道路修繕や危険箇所の報告など、市(行政)との連絡窓口の役割も果たしています。

集落によっては、月に1度、皆が集まって水道施設の維持管理費を集金する仕組みが残っており、祭礼の当番なども各戸持ち回りで行っています。冠婚葬祭も、つい最近までは集落総出で執り行っていました。

また、13の自治会と9つの各種地域団体の代表によって組織する地域づくり協議会があります。そこでは、教育や福祉など、地域の様々なことについて情報交換をしながら、地域づくり事業を進めています。今年は、真庭なりわい塾1期生と協働で空き家調査も行いました。

地域団体には、小学校PTA、消防団、地区社協などがあり、福祉委員(独居・高齢者世帯等への声かけや交流ふれあい活動を行う)、民生委員(生活や福祉全般に関する相談・援助を行う)、愛育委員(乳児から高齢者まで、地域住民の健康づくりを行う)などの役目を住民自身がボランティアで担っています。

婦人会や青年団など、現在ではなくなってしまった組織団体もあります。けれども、お盆の時期には若手が中心となって「ふるさとまつり」を開催したり、秋には「中和紅葉祭」(農業文化祭)を行ったり、地域の水辺を清掃する「ヘルシーライフの日」を設けるなど、比較的新しい行事や共同作業にも住民全体が取り組んでいます。

また、最近では、中和薪生産組合(共有林や私有林を伐採し、一社アシタカに薪を納入するグループ。薪は、津黒高原荘のボイラー燃料等に使用される)、中和の新鮮野菜届け隊(庭先野菜を道の駅に共同で出荷する高齢者中心のグループ)、中和いきいきサポーターズ(小学校の学習や維持管理、行事運営などをサポートするグループ)など、さまざまな世代が自主的に活動を行う新たな組織も生まれています。

 

中和地区には、集落単位、地区単位を基本とした自治があり、さまざまな「つとめ」を通じて、住民同士が深く関わり合いながら暮らしていることがわかりました。

引き続き、赤木直人さんには、「中和の祭礼」をテーマに一ノ茅集落の事例を紹介していただきました。

 

―― 一ノ茅は、中和地区の中でも共同作業や祭礼が多くのこる集落です。年間18種類の祭礼行事などを全戸参加で執り行っています。五穀豊穣を祈るもの、山の神や火の神に祈りをささげるもの、観音様を祀るものなど、内容はさまざまです。どの祭礼行事でも、集落のみんなが顔を合わせて、お酒を酌み交わします。

これだけ多くの祭礼を継続し続けることは、それぞれの負担にもなりますが、やめてしまおうという人はいません。集落の先輩たちは「やめるのは簡単だけど、やめたら取り戻せない」と言います。これまでも時代に合わせて、日を変えたり、時間を早めたり、工夫をしながら続けてきました。これからも、そんなふうに工夫しながら続けていきたいと思っています。

 

その後の講義では、「私たちのくらしと祈り・祭り」と題して、塾長の渋澤寿一(認定NPO法人 共存の森ネットワーク 理事長)が講義を行いました。

―― 秋田の鵜養という集落は、「祭り」をとても大切にしています。祭りは、年寄りから若い世代に、村の価値観や掟、生き方などを伝える場であり、その過程で、世代を超えた人間関係を築いていく重要な場です。毎年、旧暦4月8日には、山の神様が田んぼに降りる、田植え前の神事が行われます。各集落では、田んぼの畦畔土で竈(かまど)を作り、鍋をかけて湯を沸かします。湯が沸くと、神主が一世帯ずつ名前を呼んで、祝詞をあげます。神主は、煮えたぎった湯に稲藁を浸けて回します。参拝者はその湯気を吸って身を清める、湯立ての神事です。その後、直会(なおらい)があり、地区の総会が行われます。まさに政教一体の行事です。

ある年、準備にあたった当番が竈を作らず、ガスコンロで湯を沸かしてしまい、大問題になりました。若い世代は簡略化したやり方の方がいいと言い、年寄りたちは畦畔土の竈で、堰(せき)の水を汲んで湧かし、山の薪で湯を沸かすことに意味があるのだと言います。なぜ、このようなことになったのでしょうか。一人のお年寄りがその理由を「米づくりのやり方が変わったのだ」と話してくれました。

今の米づくりは、化学肥料や農薬を使い、農協のマニュアル通りに行います。しかし、かつて農家は、毎朝、稲の色の違いを見極めて生育状況を判断し、水管理だけで肥料の利き具合や水温を調整し、稲を育てていました。自然のあらゆるサインを見逃さないように、自分が自然と一体とならない米づくりはできなかったのです。だから、湯立ての神事も真剣に執り行われ、人々はそれによって自然(神)と一体となろうとしました。米づくりのやり方が変わってしまったことで、祭りの意味が失われてしまったのです。

一方、山形県飯豊町で出会ったおじいさんは、朝3時には必ず起きて、牛馬の餌にする草を刈り、朝飯を食べると田畑の草取る。午後は植林地の草刈りをして、晩飯を食べると倒れるようにして寝る、そんな日々を送っていました。春先の山菜に始まり、晩秋の茅刈りまで、自然と向き合う暮らしが続きます。

そんなおじいさんの家の裏にあるのが「草木塔」です。木や草を刈らせてもらうおかげで生かされているのだから、毎朝感謝して手を合わせます。山で木を伐ったら植林し、下草刈りするのは山に対する作法であり、自分の損得は関係ありません。自然の成長量を越えないように、持続的に自然の恵みを得ています。自然を傷つけたときには、それが回復するように手を施します。そのバランスと一体感、これが本来の日本人の、自然と一体となった祈りであり、生き方であり、心なのだと思いました。

「祭り」の本質は、自然、宇宙、先祖、霊、神、コミュニティ、家族、そして自分(個人)。そのすべてが重なり合っていることを体感するための作業だと言えます。一方、「祈り」は、人間が言葉にする以前の心の感覚で自然、宇宙、先祖、霊、神と一体となるための行為です。

サン・ティグジュペリの「星の王子様」には、こんな言葉があります。「心で視なければ、物事はみえない 大切なことは、目に見えない」。私たちは、言葉によって考えることばかりに気を取られて、心の感覚を軽んじ、大切なことを忘れてしまったのかもしれません。

 

夜は、前期講座の振り返りとして、2人1組のインタビュー形式でワークショップを行いました。塾に応募した動機、塾を通して気づいたこと、自身の変化、これからの生き方などをお互いに語り合いました。初めは一対一で、その後グループになって、自分がインタビューした人の話を紹介し合いました。じっくりと相手の話を聞き、また自分を振り返って話すことで、お互いに刺激を得る良いきっかけになったと思います。また、塾生の一体感も増したようでした。

 

2日目は、副塾長で中和地域づくり委員会委員長の大美康雄さんに、「中和の歴史と成り立ち」と題して、明治22年に中和村が誕生してから現在までの中和の年表を見せていただきながら、その変遷についてお話しいただきました。

大美さんは「中和の歴史は、ひたすら『時代』に追いつく努力をしてきた」と言います。そして、「特に高度経済成長期は、金銭的に豊かな暮らしを求めて走り続けてきた「時代」だった。しかし、これからは多様な生き方や働き方が求められる「時代」へと変化していく。中和には、少し前の時代には認められなかったようなライフスタイルを自ら見出し、移住してきてくれた若者たちがいる。これからの中和は、そうした若者たちの活躍の場となり、高齢者もそれを応援するような地域であってほしい。そして、小学校が存続する人口を維持して、持続可能な『ふるさと』であり続けたい」と話してくださいました。

 

最後に、真庭市の吉永忠洋副市長にもお越しいただき、渋澤塾長、駒宮副塾長、大美副塾長を交えて、「地域とは何か」をテーマにお話しいただきました。

吉永副市長からは、「真庭市は9ケ町村が合併してできた。地域自治を守るために、旧町村単位で地域づくり委員会という自治組織をつくったが、地域自治の本来の姿を考えると、旧町村単位では大き過ぎて、あまり意味がないと感じている。地域づくり委員会も小学校区単位に縮小し、『みんな集まれ』といって集まれる範囲で地域自治を進めていこうと考えている」といった自治の範囲や規模に関するお話がありました。

駒宮副塾長からは、物事を自分たちで決めていくことは「楽しい」というのが、自治の原点であること。一方、「行政は、住民がやりたいことをバックアップすることに徹しないと、地域の自治力が失われてしまう」といった指摘がありました。

吉永副市長からも、「行政が、お金を分配すれば、地域が良くなるわけではない。行政と地域は、補助金を配る側と受け取る側という関係性をお互いに断ち切らなければならない」というお話がありました。

大美副塾長からは、かつて中和地区では、「村会議員が地域の世話役で、地域住民は、村会議員を尊敬し、信頼していたものの、別の意味では、頭が上がらないという側面もあった。だから、地域住民から何かをやりたいという提案が出ることはほとんどなかった。また、自治会長と村長の飲み会の場が、行政と地域との意思疎通の場であった」といったお話があり、逆に、こういった男性中心、年配者中心の人間関係が希薄になってきたことで、「若い人は新しいことをやりやすい雰囲気になってきたのではないか」というお話がありました。

それを受けて、駒宮副塾長からは、「かつては、道路や建物など、インフラを整備することが地域を良くすることだと信じられていて、それには大きなお金がかかるため、住民は要望書を書いて市に陳情してきた。それが自治だと思っているのが、今の70~80代の世代である」ことや、「今の地域の課題は、教育・医療・福祉の分野であるが、その大半は、これまで女性が関与してきたため、男性にはよくわからない。また、教育・医療・福祉は個人の問題だと捉えられがちなため、地域の問題として浮上してこない傾向がある。これらを解決するためには、女性や若者を意識して入れていくということが必要」といった指摘がありました。

最後に、吉永副市長からは、「真庭の北房地区では、地域おこし協力隊の韓国人の青年が外国人向けのシェアハウスをつくり、それによって、地域住民が多様な価値観をお互いが認め合うようになり、地域が元気になってきた。これからは、多様な価値観を持った人が活躍できる仕組みをつくることが、行政の政策のあり方だと思う。既存の考え方に固執するのではなく、時代に合わせて解釈を変えたり、制度を変えたりと、柔軟に対応していくことが大事だと痛感している」というお話がありました。

また、渋澤塾長からは、「真庭の里山資本主義は、地域の木材価格を、自分たちで話し合い、決めることからスタートした。お互いの顔の見える関係のなかで、お金を利用し、思いをのせたモノを動かしていく仕組みをつくると、地域のなかでお金がまわるようになり、雇用も生まれる。地域には祭りや祈り、住民の密接な関係性などのお金に替えられない価値もたくさんある。その価値も含め、守っていくことが自治であり、内部循環経済の目指す目的だ」といったお話がありました。

さらに、駒宮副塾長からは、「日本は明治以降に近代化され、民主主義が導入されたと教科書では教えられが、実際は、それ以前にも、民主的な自治があった。地域自治を進めていくのにも、地域経済を活性化させるのにも、『人』が必要だ。そうした人材を、地域で育成していくことが、これから重要になると思う」といった、まとめの言葉がありました。

 

《講義資料》

講義1)

「地域で生きる~ツトメとは何か~」①

「地域で生きる~ツトメとは何か~」②

事例紹介)

「中和の祭礼~一ノ茅集落の事例~」①

「中和の祭礼~一ノ茅集落の事例~」②

講義2)

「私たちのくらしと祈り・祭り」

レクチャー)

「中和の歴史と成り立ち~小さな村の140年の軌跡~」

 

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